第2章 兵藤澄江
三.寝耳に水
次の日、また教頭に呼ばれた。今度は会議室ではなく、資料室へ来いとのことだった。
資料室はひんやりしていて、古ぼけた独特な匂いがする。
「分からないとは言わせませんよ。先生の軽々しい言動のせいで、何人もの生徒や先生、保護者までもが傷ついているのですよ!」
(え? 何?)いよいよ訳が分からなかった。
私は怒鳴られる覚悟で「すみません。本当に思い当たることがないんです」
教頭はまた私を睨みながら、「図々しい! 教師として、してはいけないことをして、よくいけしゃあしゃあと! 先生が今回の中間考査で問題を流失させたことは、知っていますよ」
(は?)
「このことは校長にも報告が行っていますから、そのつもりで! それから、生徒たちには当分接触しないでください。部活指導も結構です。何か言いたいことは?」
私は、何が何だか分からぬままであったが、言わない訳にはいかなかった。
「一方的に何の話でしょうか。私がテスト問題を流失させた証拠でもあるのですか?」
教頭は更に大きな声で言った。
「往生際が悪い! では、生徒たちが嘘を言っているということですね」