鶸色のすみか

月子は、新婚旅行先のハワイアンショーを見ていて忍び笑いが止まらなかったことも思い出した。

ハワイアンショーでは、色とりどりのレイを首や頭につけてにこやかに優雅に女性たちが踊るだけではなく、厳粛な儀式で神様に捧げる踊りが男性によって演じられるのが醍醐味らしい。屈強な肉体を披露しながら踊り演じる様子を見てなぜかおかしくてたまらなくなった。

ショーが終わってから周りをみても、当然ながら、誰一人自分のように失笑していたような人はおらず、我ながら不謹慎さに呆れた記憶がよみがえってきた。

「世の中にはいろんな恐怖症があって、強迫思考の一種なんだよね」

「強迫思考って、やかんの火を消さず外出したと思い込んで何度も家に帰る人とか、何時間でも手を洗い続ける人とか?」

妹が聞く。

「そうそう。人の数だけ恐怖症があるってことなのよ」

「みんな恐怖を抱えて生きているんだね。タンジュンに」

「いや、単純ではないでしょ。」

月子は洗面所での白鳥さんを思い出していた。

姉の車を止めていた百貨店の駐車場に行った。