鶸色のすみか

妹が自嘲気味に笑う。

「くしゃみで済めばいいじゃない。こうして姉妹仲良く本音を言い合えるほど仲がいいんだから母も喜んでるって。あんたは末っ子だから被害少なかったよね」

「お姉ちゃんたちを見て学習したのよ。親が進めるレールに乗っとけば大丈夫かなってね。タンジュンにね」

「そりゃあ、悪かったね。私らの素行が悪かったから」

「でも、お母さんの反対を押し切って結婚した大きい姉ちゃんが一番幸せになってる」

姉夫婦が自営業で始めた雑貨のネット販売の会社は年々業績を伸ばしている。

「それより離婚するならグスグズしないでさっさとすれば。正社員で雇ってあげてもいいんだから」

「ウンウン、ありがたい話。あのおっさんのせいで私の人生めちゃくちゃだよ」

妹は、浮気を繰り返す自分の夫のことをいつからか「あのおっさん」呼ばわりしていた。妹の会話の中では、すべての不都合、障壁の原因が 「あのおっさん」に集約されていた。妹のトングを持つ指先のネイルがキラキラと光る。肉をひっくり返すと炎が上がり、指先が溶けるのではないかと月子は気になったが妹はまったく平気な様子だ。