しかしユーの言うとおり、僕たちの中学の野球部はとても弱かったし、僕も密かにプロ野球のスカウトが青田買いに近づいてきてくれるほどのレベルには到底達せず、草野球に毛が生えたレベルで終わってしまった。
それでも毎日楽しくて遅くに帰ることが多く、マコトやユーやカホとは段々と会えなくなっていた。学校で会うときもなぜか照れくさくなってきて、特にカホとはあまり喋らなくなってしまった。
土曜日や日曜日にたまに部活の練習がないときにカホの店に行くと、たいていカホは店を手伝っていて、昔のように話してくれたけれども、僕の方が少し話せなくなったかも知れない。
それでもカホの店に行くのは、僕の中では王さんになることと同じくらい大事なことだった。
マコトは柔道の才能があったらしく、柔道部に入るとメキメキ頭角を現し、学校でも地区でも注目されるほどの実力を持つようになっていた。
「すげぇー」
中学二年の時にはじめて、僕はユーとカホと一緒にマコトの柔道の大会を見に行って、本当に驚いた。
あのどちらかというと軽々しい性格のマコトが立派な柔道着を着て堂々と相手と組んでいるのを見て、三人で顔を見合わせてしまった。
「あれ、本当にマコトか?」
試合が進み、どんどん勝ち進み、その日マコトはついに決勝まで残ったのだ。
「マコト、相手をよく見て、つかまえろー」
近くでだみ声でどなっているうるさい親父がいるなぁと思って、よく見たらマコトのお父さんだった。普段、黙っているところしかみたことがないのに、すごいテンパりようだった。
【前回の記事を読む】あまりお金を出してもんじゃ焼きを食べた記憶がない。いつもカホのお母さんが食べていいよと言うので甘えていたが…