ユーはいつも本を片手に持って歩いていたけれども、もんじゃ焼きを食べるときだけはカホの言いなりになって、本をほったらかしにして、コテでもんじゃをつくっていた。

「ちゃんと土手作ってくれないとお汁が逃げちゃうじゃない」

そうカホに言われて、ユーは真っ赤になって眼鏡を曇らせながらも必死にもんじゃ焼きをつくっていた。僕とマコトは慣れていたので、もんじゃ焼きの作り方でカホに文句を言われたためしはない。

天才ともんじゃ焼き作りは両立しないなぁと僕とマコトはユーを尻目に見ながら、余裕でもんじゃ焼きをコテで食べたものだ。僕たちがもんじゃ焼きを食べられたのは、僕らの小さい時のもんじゃ焼きが駄菓子の延長で安かったからだ。

そして今店で出るような大きさではなく、ぐっと小さかった。

また時々カホのお母さんが「今日は食べていきな。ただでいいよ」と言ってくれたのだ。

思い出してみると、あまりお金を出してもんじゃ焼きを食べた記憶がない。いつもカホのお母さんが食べていいよと言うときだけ食べていたのかもしれない。

僕とマコトとユーはカホを寂しがらせないためにも店に行っていたと思っていたけども、カホの店には、かなり迷惑だったのかも知れない。それでも友だちは大切だからと大きくなって僕は過去を簡単に正当化してしまった。

もんじゃ焼きは東京の下町の食べ物だった。

隅田川界隈や浅草、今では有名な月島に立派なもんじゃ焼きの店があるが、もともとはおかしのようなもので、江戸時代からあるらしい。