わが家の野菜を待っている人がいる限り、安全で新鮮な野菜を提供し続けよう。「能登はやさしや土までも」と言われているが、この言葉を肝に銘じて、おごることなく今後の農業に頑張っていきたい。
農業には、すさんだ心を癒やしてくれる力があると思う。
農業っていいなあ、農家の嫁ってステキだなあ、と思われるように心身共に磨いていこう。結婚して二十五年経った今、気がついたら農業のとりこになっていた。
息子の高校卒業と同時に、家族経営協定を結んだ。これは、息子のために、休日や給料を約束したものである。どんな会社でも、規約というものがある。農業にもあってもいいはずだ。
そうでないと、後継者は育たないと思う。これで、息子も「お手伝い」のイメージがなくなって、堂々と働くことができると思う。一年間は研修期間として、どこへ行ってもいいし、その間も給料は払うということにしていたら、本当に出て行ってしまった。
友だちの紹介で、ある会社の力仕事だったらしい。これで三年は、いやもう農業がいやになって帰ってこなくなるかも知れない、と私たちはがっくり肩を落とした。
「一年で帰ってきてほしい」、そう願いながら三日が経った。息子は、顔色を変えて四日目の早朝に帰って来た。
そして、ぐっすり寝た。どうしたというのだろう。息子は、その日の内に会社の責任者に謝りに戻った。どうやら逃げてきたらしい。
あまりに過酷な仕事であるのと、三日三晩の夜遊びに付き合わされたらしいのだ。これが本当の三日坊主である。
しかし、私はたった三日間でも息子は成長してきたと思った。逃げてきたからには、いくら謝るといっても身の危険を感じる。その後、もくもくと農作業に励んだことは言うまでもない。