第二章 日本民主保守党と先立つもの

それから数日後、今度は岡山県選出の新人議員が離党届を持って幹事長室を訪れた。

「えっ、今度は君か? つい最近入党したばかりじゃないか、何故だ?」

と幹事長が叫ぶように言った。

「前回選挙では、勝ち上がった方を公認し、選挙区の支部長とすると裁定をされました。今回私は無所属で戦って、勝ち上がりました。確かに入党は受け入れて頂きましたが支部長の椅子は未だ明け渡して頂いてはおりません。幹事長、何時明け渡して頂けるのですか?」

と逆に質問された。

「えっ、それはそう単純な話じゃない。相手は当選六回を誇る我が党のベテラン議員だ。君は未だ初当選を果たしたばかりじゃないか」

と窘めると、

「当選六回のうち小選挙区で当選したのは私と同じ一回だけですよね、あとの五回は何れも比例区での復活当選です。その五回の内の四回はダブルスコアで小選挙区では敗れていますが比例候補の優遇措置や惜敗率六〇%で復活当選をしています。六〇%って惜敗ですか? 直近の選挙でも私との票差は約二万票で惜敗率は七〇%です」

と幹事長は岡山の新人議員に詰め寄られた。

「……君の悔しい気持ちはよく分かる。しかし党として何はともあれ復活当選であろうがなかろうが六回当選という実績を無視する訳にいかない事は理解できるだろう」

と幹事長は何とか宥めようと必死だった。

「でもそれでは小選挙区から二人の与党議員を輩出できたことになり、勝敗を決した意味がありません。私は選挙戦の中でこの矛盾のある小選挙区比例代表制を中選挙区制に戻そうと主張して当選しました、幹事長は今のこの小選挙区比例代表制を中選挙区制に戻してくれると約束できますか?」

と幹事長に中選挙区制へ戻すと約束をするか?と迫った。

「……我が党としては当面選挙制度改革など考えて居らん。中選挙区制に戻すなどといった議論も党内には存在しない」

と不機嫌そうに答えた。

「私は有権者に中選挙区制に戻すべきと公約して当選を果たしました。私には公約を守る義務があります。どうか私の離党届を受理して下さい」

と言って頭を下げた。すると幹事長は苦々しげな顔をして、

「やむを得ん、分かった」

と言った。岡山選出の新人議員は、

「短い間でしたがお世話になりました」

と言って一礼し幹事長室を後にした。