第二章 日本民主保守党と先立つもの

「私は昭和二十年に生まれました。日本は敗戦国から這い上がり、一ドル三六〇円の固定相場の中で今の中国以上に低賃金で劣悪な職場環境の中、私の父や兄、同世代の人達が必死に働いて経済を立て直し今は中国に抜かれましたが一時は世界第二位の国民総所得を誇る経済大国になりました。

しかし、バブル崩壊と共に日本の経済は低迷し、失われた三〇年と言われる現在において、余りにも政治の無為無策ぶりに心から憤っています、特にスキャンダルの追及をする事で存在感を発揮しようとする野党を見るにつけ、この国の政治家と官僚の不作為には、はらわたが煮えくり返るほどの怒りを感じています。

そういった現状を少しでも改善できればと思い先生と一緒に国家戦略企画研究所を立ち上げ、シンクタンクとして良識に基づいた貴重な政策提言を数多く日本政府にはしてきたつもりですが、政権交代があっても何も変わらなかった。

その間に世界第二位だった国民総所得は中国に抜き去られ、日本の子どもの七人に一人が貧困と言われている現状にもう我慢できないのです。

折角の政策提言を政府が聞き入れてくれないのなら残された道は実力行使あるのみで『肉を切らせて骨を断つ』思いで政党を立ち上げ、来る総選挙に臨みます」

と武藤が秘めていた思いを打ち明けた。これを聞いた山脇は、

「物心両面でとことん応援させて貰うから、思う存分やりなさい」

といって激励してくれた。