第二章 日本民主保守党と先立つもの

衆議院議員選挙への候補者発掘、擁立作業と並行して武藤は新党立ち上げの準備を用意周到に進めていった。

総務省のホームページに自らアクセスしては、最新の公職選挙法を入念にチェックする中で、新党を五人以上の現職議員を含めて立ち上げれば政党要件基準日である一月一日時点での在籍議員数で政党助成金総額に対して人数割合に応じて政党助成金が国から支払われることになっている。

仮にその政党助成金総額が三三〇億円規模とすると、立ち上げた政党所属現職議員が六人以上いるだけでその額は三億円を超える事等把握していった。

(三億かー頂いちゃいましょう!)

と独り言を呟きながら政党公認候補者は無所属立候補者よりも、選挙用法定はがきや選挙用チラシ等で優遇策が講じられている事等を知り、改めてお手盛りの法律であると確信していった。

そしてさらに調べを進めると、たとえ小選挙区でトップ当選者の二割程度の得票しか得る事ができなくても、政党に所属し重複立候補していると、党が善戦する事で惜敗率が一九%程度であっても、復活当選できてしまう事等を突き止めた。

(はあっ、惜敗という国語の意味までおかしくしているでしょう? 一九%で惜敗? あり得ない! そんな理不尽な事私が絶対許さない!)

と選挙制度改革の必要性を、改めて感じると共に、中選挙区制への移行を決意するのであった。

「小学校や中学校の生徒会長選挙でさえ氏名を書いて貰って当選しているというのに国会議員が名前を書いて貰う選挙で落選しても政党名を書いて貰う選挙で当選できるなんて、日本の子どもも国民も納得できない! ふざけるな!」

と衆議院小選挙区比例代表制選挙を調べれば調べるほど武藤の胸の内に怒りが込み上げてきた。

そんな心境の中、新潟で講演を依頼され応じた際、講演を終わって久しぶりに飲食を共にした中学時代の同級生が、

「武藤先生教えてくれない? 衆議院議員選挙で比例代表制と言うけど比例代表の候補者が選挙期間中に街宣活動しているのほとんど見た事ないんだけど、比例候補者って選挙期間中何しているの?」

と問うてきたのだ。それに対して武藤は、

「えっ、東京では政党の宣伝カーに比例候補者が乗り込んで渋谷、新宿、池袋、赤羽、品川等のターミナル駅前で派手に街宣活動していたわよ、こっちはそういうのないの?」

と逆に聞き返した。

「ない、ない、そんなの見た事ない」

と答えると、

「えっ、そうなの。何でだろう?」

と武藤も首を傾げてしまったのだが暫くすると、

「あっ、そういう事か! 分かった」

と同級生が驚く様な声で言った。