第一章 トップ会談と候補者擁立

これを受け、武藤は次なるターゲットへとアプローチしていった。一週間後理事長室にその男の姿があった。

「久しぶりねぇ、政治家家業を始めて何年になるの?」と武藤に問われ、

「一九八五年に東京都議会にデビューして以来なので三七年目になります」とその参議院議員が答えると、

「貴方、今お幾つ?」と問い「六三になりました」と答え、

「二六歳で東京都議会議員になったってこと?」と言われ、

「はい、そうです。当時東京都議会で一番若い議員でした」と答えた。

「都議会議員、区長、衆議院議員、参議院議員、党幹事長、党首、防衛政務官、内閣府大臣政務官って、経験していない事がないくらいな経歴の持ち主ね」と持ち上げてみせると、

「薄気味悪いですね、そんなに褒められると……」と議員が言ったのを受けて、

「貴方のその華麗な経歴と経験を見込んで私の立ち上げる党から次の衆議院議員選挙に立候補して欲しいの。区長の経験があるんだからその区長をやった選挙区から立候補すれば有利だわ」と武藤が言うと、

「私が立ち上げる党って何ですか? 理事長は何をしようとされているのですか?」と参議院議員が質してきた。

「政党を立ち上げて、小選挙区と比例区で一〇〇名以上の議席を得て、連立政権に加わりこの国を色々と変えてやろうと思っているの、手始めに選挙制度を中選挙区制に戻そうと思っているわ。

憲法改正の発議もしようと思っている。その改革に貴方にも協力して欲しいの。それと貴方には当選した議員の教育指導係をして頂きたいの、お願いします」と言って武藤が頭を下げた。

「や、やめてくだい。先生にそんな事されたら困ります。私で良ければ何なりとお申し付けください。先生にそんなに高く評価して頂けただけで光栄です」と議員が言ってくれた。