次、「ニーテンゴ、ニーテンロク・・・」と声をかけながらすましているのです。夫の(だまされたか)というように訴える顔を横目に見ながら、やっとごくごくゆっくりと「サアーン」と続き、約束の三秒を終わりにしたのです。
してやられたと言わんばかりの夫は(でも彼女なら仕方がないな)と目を大きく開け、にこにこしながら抗議の目を向けているのでした。
この二人の呼吸には外野として立ち入るすきは全然ありません。これがドスコイお姉さまの持つ魅力というものではないかとふと思ったのでした。
こうしている間にも他の群団員たちはあちこち走りまわって、水送りのホースを片付ける者、ベッドの調整をする者、浴槽の組み立てをパコパコ外す者、バイタル、血圧を測る者など、それぞれの役割分担をこなしているようです。
さすがその手際の良さにはただただみとれるばかりです。これがプロと主婦の違いというものなのかと感心しているうちに、作業はすべて終了してしまいました。
「じゃあ、また来週までこの私の美人に会えないのでさびしいでしょうが、がまんしていてね。堀内さん。バイバイ」と嵐は過ぎ去って行きました。
後に残るは瀬戸の夕凪というところでしょうか。
【前回の記事を読む】【闘病記コンテスト大賞】男性二人、女性二人で一チームが構成されている訪問介護の入浴補助。手際の良さはさすがプロ。
次回更新は9月24日(火)、11時の予定です。