筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護
「地味、地味、地味!」の のどかな山中病院
(1)次のレスパイト病院案いただく
わが家における夫の実質的な介護人は、娘と息子の二人です。私は何もできないので、さしずめ洗濯担当の居候といったところです。
今は、朝九時から夜六時(十時のこともある)までは訪問看護師、ヘルパーのみなさんのお世話になり、それ以降朝九時までは家族で担当という介護サイクルとなっております。
ところが夜の実質介護担当人のわが家の子供たち二人が、とても忙しいのです。
わが家は、娘言うところの『しがない、貧乏なペンキ屋稼業』です。昼間は通常の仕事をこなし、夜は時とすると明け方近くまでいろいろな書類作りに忙殺されています。また、仕事先が遠方になることもよくあります。
娘もいろいろの手配係りとして、現場に同行することも間々あります。また事務、渉外全般も担当しております。これに、夜中および明け方と二回の定期トイレ介助等もあり、睡眠時間は小刻みとなり、子供たちの疲れは極に達していることはよく判ります。
心も疲れのため尖ってくるのがよく判ります。これでは夫も家族も共倒れになりかねないと思いました。
今のわが家の状況からして、せめて一、二か月に一回病院に預かっていただけたらどんなに家族が助かるかと思います。
このところ介護疲れで病人を道連れにしたという悲しい話を新聞、報道ニュース等で見聞きしますが、これでは介護保険制度その他数々の福祉立法の下、福祉先進国の座を築かんとしている我が国の根本精神が、報われません。決して私が厚労大臣になったわけではありませんが・・・。
何とかしなくてはと家族で話し合いをしてみましたが、良い案が浮かびません。
ところがこの窮状を持って広島市でのALS協会広島県支部の会に出かけた娘から、朗報がもたらされました。
「レスパイト(看護人の休息を目的とした一時的な患者の介護)の入院先を一か所にしておくから三か月に一度というスパンの虜になってしまうのよ。他にもう数か所レスパイト先を増やして、家族の生活の調整をしたほうがいいと思うよ」
と先輩たちからアドバイスをいただいたというのです。
さっそく訪問医師の角川先生にご相談申し上げ、先生はこの地域の事情に疎いわが家族のために、数か所の病院をお教えくださいました。
その一つが、この山中病院です。わが家の隣市にあります。私のとびきりの低速運転でも四、五十分というところでしょうか。