筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護
『ドスコイお姉さま群団』参上
下(しも)はやさしいお兄様の担当らしく、夫への「おしもを洗わせていただきます」の声掛けとともに、周りのギャラリーの目から逸らすために夫の下半身部分にタオルの帷(とばり)を下ろし、ていねいに洗います。
この時点で夫の顔はほんのりと朱が注し、心地良さも最高潮に達しているようです。そして仕上げ洗いをされ、ていねいに拭かれ、また人工呼吸器とともにベッドに戻されるのです。
この間に一人の担当者がベッドのシーツを新しい物と取替え、枕カバーも新しい物と取替えます。そしておむつ、パジャマ、下着類をすぐに着られるばかりの状態にして主の帰りを待つのです。入浴のこの所要時間は、二、三十分というところでしょうか。
「ああ、いい顔になった。その顔で今までさんざん奥様を困らせてきたんじゃないの」
というドスコイお姉さまの問いかけに、いつもはこうした話題が得手ではない夫も、さっぱりとさせていただいたお礼の気持ちからか、ただニコニコと応えているのが少しいじらしく見えました。