時間を掛けたから、といって製品の品質が向上するものでもない。むしろ、手を掛ければ掛けるほどでき映えは劣ってくるのが常だった。

松葉はこれでは将来性がない。もう一度交渉してみようと思って、先ず経理課長に資金繰り表を持ってくるように言った。

運転資金をやり繰りして捻出できる額を検討してみた。しかし、資金繰り表をどんなに見ても、そんなお金を捻出できるところはなさそうだが、「塵も積もれば、山となる」と話して、経費の削減計画の作成を指示した。

次に、販売課長を呼んで、半年先の工事ごとの売上予定、回収時期について聞き、見積りから受注までの時間、施工図の作図着手から承認までの時間、承認から工場投入までの時間の短縮を図るように指示した。

営業が抱えている時間が長すぎる、即ち受注から工場製造着手までの時間の短縮を図れば営業が生産性を上げることになる、そうすれば資金が浮いてくる筈だ、と強調した。

工場長と管理課長に購入資材の見直しを指示した。もっと安くならないかという交渉では数%の削減にしかならない。大きくコストを削減していくためには、設計そのものから見直し、品質を落とさずに安い代替品はないか検討しなければコストは下がらない。

営業、設計、製造、工事、それぞれの課で原価低減を図るのではなく、それぞれの課が一堂に会して、課の垣根を取り除いて原価低減に取り組むように指示した。

みんなの意見を聞き、顔色を窺ってみると2千万円ぐらいは捻出できそうな感触を得た。そこで、先ず電話で1千万から2千万円を念頭に交渉してみることにした。