第4話 強制的トリクルダウン
インドに行ったら、タージマハルを見たいと思っていた。いつだったか忘れてしまったが『スラムドッグ$ミリオネア』という映画で見た、あの真っ白な美しい宮殿。愛する妻のために建てられたというロマンチックな総大理石の宮殿に憧れた。しかし、実際にインドで心を動かされたのはやはりそこにいる人々の姿だった。
2018年4月25日
デリーの空港にはホテルからの迎えのタクシーが来ているはずだった。税関を出たところに思ったとおりホテルとゲストの名前を書いたプレートを掲げた大勢の人が待っていた。
その一つ一つを丁寧に見ていったが私のものはなかった。もう一度逆から見ていったが、有名な一流ホテルばかりだ。
どうやらエアコンの効いているロビーに入れるのは一流ホテルの送迎者だけで、二流以下のホテルはもっと外の炎天下で待っているとのことだった。始まったぞ、インドの訳のわからない階級付け。
インドの交通渋滞ぶりは聞いていたが、タクシーに乗って驚いた。渋滞もするはずだ、4車線の道路をなんと5車線になって走っている。少しでも隙間があれば車線変更としているうちにこうなってしまうのだろう。
ドライバーは、驚いている私を見ても何が珍しいのかわからない様子だった。しかも走っているのは自動車だけではない。三輪車あり、自転車で引いている荷車あり、バイクあり、自転車あり。人が引いている荷車、牛まで歩いている。これぞまさにカオス。
ホテルは列車移動に便利なようにニューデリーの近くにとっていた。大都会の真ん中なのでそれなりにきれいな街中を予想していたが、これが全くそうではない。ほこりの舞う道路のわきに小さな店が軒を連ねていて、野良犬と牛が行きかう路地にあった。