忍び寄る病魔

千恵は、以前、友人とラスベガスのカジノに行ったことがあると聞いたことがある。ゲームのルールもよく知っている。千恵にマナーやルールなど教えてもらった。

お遊び程度と思って、一万円を両替した。まずは、お決まりのルーレットだ。私は初めてだったが、TVで見たことはある。

最初は、赤色と黒色のところに一枚ずつチップを賭けていたが、それでは儲からないが、どちらかは当たるので、それにしようとしたら、

「それじゃ、賭けになってないよ!」

と言うので、素直にやめた。バカラは聞いたことがあるが、ルールは知らない。ルールを教えてもらい、やってみた。結構楽しい。隣人が日本人らしく、

「俺の知っている人が、昨日大負けして現金全部巻き上げられて、それでも足りなくなって、腕時計を質に入れたそうだぜ」と日本語が聞こえてくる。

私は若い頃、少しだけパチンコにはまっていた時があった。ある人を待っている間、暇だったのでパチンコでもしようかとやってみたところ、一瞬にして千円が数万円に化けた。

それからというもの、儲かったお金で、またやってみた。ダメだった。またやってみたが、またダメだった。

直ぐに、儲かった金額より、損した額の方がはるかに多くなった。お金を損したことよりも、貴重な時間で何をやっていたのだろうと反省した。

それ以来、賭け事はやっていない。私はお金がからむと熱くなってしまい、元に戻れなくなることを恐れていた。

夕食のことも忘れ、カジノに夢中になっている千恵を見ていた。

最終日は、香港に宿を移したが、その夜はちょうど台風が来ており、台風の大きさは最大級だ。ホテルから一歩も出られない。夕食はホテル内のレストランで取った。

「香港の夜景はとてもきれいで、パパにも見せてあげたかった」