二番目に行ったお寺では、住職にお願いして座禅をさせてもらった。私は、住職に、
「短い時間で結構ですので、座禅をさせてください」
とお願いした。住職は、にっこり微笑み、
「いいですよ」
と言ってくれた。それ以外、何も聞かなかった。私はお寺で座禅をするのは初めてだ。座禅の作法がよく分からず、住職に、
「座禅をするのは初めてです。作法が分かっていません。教えてください」
とお願いした。その時も、嫌な顔一つせず、教えてくれた。
私は、座禅をしている最中、ずっと千恵の喜ぶ姿を思い浮かべていた。がんを患ってからというもの、心の底から喜んでいる姿を見たことはない。
抗がん剤の副作用でいつも辛そうにしている。何をすれば、千恵が心から喜んでくれるのか?幸せだと感じることができるのか?答えが見つからないまま座禅の時間は終わった。
今まで、家庭を顧みず、仕事一筋で頑張ってきた。千恵に何もしてあげられなかった自分の言動について、心の中で詫びた。
帰路の途中、強い日差しを受けながら、辺り一面にひまわりが力強く咲いている景色をずっと眺めていた。
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次回更新は8月29日(木)、16時の予定です。