メイクに時間をかけ、鏡を見ながら、

「パパ、私って化粧で変わるでしょ、どう?」

と言って、喜んで外に出かけ、人と会うのを好んだ。今は、外見を気にし、外に出ることを躊躇っている。ウィッグを付けているところを知り合いの人に見られたくないのだろう。

千恵ががんと分かった時、母にはその旨を伝えたが、姉には話をしていなかった。姉は、以前、看護師の仕事をしており、乳がんがどういうものか、他の人よりよく知っていた。

手術後、再発し、姉に妻ががんであることを伝えた。話してもどうにもならないことは分かっていた。それでも誰かに打ち明けたかった。

「妻が乳がんになってしまって……」

「どういう状態なの?」

と姉は問いかけてきた。私は、

「乳がんと診断されたのは去年の十一月末、その時のステージはⅢの末期だった。三月に手術をして切除したんだけど、リンパに転移が見られると、医者が言っていた」

「娘は中学受験が終わり、今は中学一年生で、都内の学校に通っている。妻は、抗がん剤の投与を始めたところ」。姉は、

「私の知り合いで乳がんになった人がいて、その人もかなり進行していたと聞いている。五、六年経ったと思うけど、元気に生活しているよ。大丈夫だよ、身体を冷やさないようにして、栄養のあるものを摂って……」

きつい性格の姉から温かい言葉が返ってきた。

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次回更新は8月27日(火)、16時の予定です。

 

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