試験に合格した直後の生徒の口から出る言葉はまず「うれしい。信じられない。先生ありがとう」です。この言葉はその子を指導していた塾関係者にとっては喜びを共有できるうれしい言葉です。

しかし、数日すると受験生の心の中で変化が起こり「でも試験自体の手ごたえは感じていたかも」となります。これが第1段階です。そしてさらに数日たって、友人と会ったり周囲の状況を伝え聞いたりして情報収集をすると「自分は合格して当然だった」的に変化していきます。

後輩に自分の学習スタイルを聞かれ少しずつアドバイスを始めます。これが第2段階です。そして医学部に入学して同じ試験を勝ち抜いた仲間との生活が始まり、受験時代の情報交換をした後になるとさらに「合格する私のやり方は正解。他は邪道」のようになってきます。

この段階で合格体験記の執筆依頼をされるのが一般的ですので、どうしても「合格体験記」=「自慢話」的になってしまいます。そして受験生にとってありがちの言葉「カンペキ」という曖昧な言葉を取り込んで、英語はまずターゲット1900を完璧にした」といった具合に書き進められます。

その状態で書かれたものを、何も知らない受験生やご家族がそのまま読んでしまえば「へー、やっぱり医学部に合格する子はすごいねえ」となるのは当然ですね。「(従来の)合格体験記」から合格のノウハウは得ることが難しいのです。

その子の成績からしたら「受かって当然」だったのか「ギリギリ間に合った」のか「なんで受かったのだろう」といった指導者の声が載ることはほとんどありません。

(従来の)合格体験記に書かれていないこと

そしてこれが最も大切なことなのですが「合格体験記は営業ツールである」ということです。合格者に合格体験記を依頼する学校や予備校は、その生徒を賞賛するために体験記を編集するのではありません。それによって学校や塾の付加価値を高めるために体験記を作成するのです。

よって、学校や塾のおかげですといった、付加価値の上がる文言、内容はそのまま使われます。逆に学校であれ、予備校であれ体験記に書かれたことが校風と違うとか予備校のスタイルと合わないとかいう箇所は削除されます。

例えば「高校ではなるべく内職をして、受験科目に絞って学習していました」といった文は削除されます。また、「予備校の自習室に朝から晩までこもり、出席する授業を絞って勉強して学習効率を高めました」といった文もそのまま載ることはないでしょう。

しかし、こうしたことがその生徒の本当の受験スタイルであって、合格体験記に書かれていることがすべてではない、ということなのです。

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