秀司は妻の裕子を裏切っているとは思っていなかった。裕子のことは十分に尊重しているつもりだったし、秀司の人生にとても大切な存在で一生添い遂げたいと思っている。

裕子は168センチメートル、五十五歳という年齢では背の高い方でスタイルも良く、街中では少々目立つ美しい女性だと秀司は思っている。三十年近く共に人生を歩んで、二人の子供も育てた。

苦労も多かったが様々な難局を二人で乗り越えてきたという信頼もお互いに揺るぎないものがある。

秀司は裕子を愛しているという自信があった。だがそれは恋愛感情とは別物なのだ。結婚した当初はもちろん恋愛感情もあったし、好きな女性と一緒に暮らして、毎日触れ合えるという喜びを感じていたのは間違いないことだ。

秀司の友人たちの話でも四年、短い場合でも一年くらいは妻へのオンナとしての興味を持ち続けている。逆に言えばそのくらいの期間で妻への恋愛感情は消え失せているのだ。

ある著名な人類学者は、愛についての著書の中で、「愛は四年で終わる」と書いている。恋愛状態にあるときに脳内で分泌されるドーパミンという神経伝達物質が関係しているのだそうだ。

ドーパミンとは快楽を感じたりヒトを意欲的にさせる物質で、努力して何かを達成することや、そのために長期間頑張ることが出来るのもドーパミンのお蔭らしい。

快楽物質とも呼ばれるらしく、恋愛状態にあるヒトの脳内では大量に分泌されているのだ。だがその分泌には当然ながら理由があり、分泌される期間も限定されている。

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次回更新は8月19日(月)、20時の予定です。

 

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