単なる男の我が儘、ジェラシーだとわかっていたが、そんな夫の態度をかっこ悪いと奈保子は思う。妻を妬むなんてどうかしてる。私は、自分が優位だ、自分の方が金を稼いでいる、などと不遜な態度を取ったことは一度も無いのに。

お互いにもっとおおらかでいられればいいのに……。

そんな状況・タイミングで秀司と出会った。人生はタイミングなのだ。

奈保子は男好きでもなければ多くの男に好奇の目で見られるような女でもない。浮気など考えたことも無かった。まさに魔が差した、という感じの一夜だった。

二人とも大人だし、一夜限りの付き合いのつもりだったが、十年以上営みが無かった奈保子の身体がオトコに好かれ大切に扱われる心地良さを思い出し、お互いの相性も良かったことから月に二~三回の夜の付き合いが一年半ほど続くことになったのだった。

二人とも酒好きだということがハードルを下げたことは確かである。またW不倫という少々スリリングな匂いのする遊びもその時の二人には魅力的に感じたのだろう。

秀司も奈保子も、特に罪悪感のようなものは感じなかった。

最初の、初めての夜だけはさすがに奈保子は少々戸惑いも罪の意識もあったようだったが、何度か逢瀬を重ねるうちに普通に会って飲みながらおしゃべりをし、食事をしてその先の行動を取ることに違和感は無くなった。

双方の仕事の愚痴や子育ての苦労話もするし、酔いも回るとお互いに求め合う。頻繁に会えたわけではないが、同じ事の繰り返しの毎日に少々の刺激やワクワク感が欲しいという中高年の男と女の、それぞれの需要と供給がマッチしたということなのだろう。

お互い社会的な立場もあるので相手への感情には抑制が利き、家族も子供もいるのだから感染症の心配もまず無いだろう。妊娠に気を付けて楽しめば良いだけだった。

こんなカップルは都会では、いや都会に限らず日本中でありふれた存在だと思う。