冬の訪れと卒業式
病気を治すには、運動と睡眠と食事の三つの方法が有効だと知人から教えてもらった。そのことを信じ、一つ一つ見直して、少しでもがんの進行を抑えたい。
まずは、運動だ。既に肌寒い時期になっていたが、
「日中の暖かい時間帯に、一緒にウォーキングでもしない?」
「身体が冷えないように少し厚着して、多少心臓に負担がかかるくらいで、二十分程度以上やるのが良いみたいだよ」
と誘った。休日には、三十分から一時間程度、一緒に散歩をした。自宅にいる時は、必要なことしか会話しないが、外では不思議と話のネタを思いついた。
「小さい時は何になりたかった?」
「通っていた料理教室では何を作ったりしたの?」
等、今までしたことがないような他愛もない話もした。一緒にいて話をすることで、心の安らぎになればいい。
寒く、外に出ることが辛い時のために、自宅でもウォーキングできるルームランナーを購入した。部屋を暖かくし、ルームランナーを最長の三十分に設定した。千恵が体を動かしているところを見るのが好きになった。
千恵がルームランナーをしている間、
「いち・にい・いち・にい……」
と声を出してやる気を掻き立てた。汗をかいて代謝を良くし、免疫力を向上させ、がん細胞を死滅させることができるのではないかと自分を信じ込ませた。頑張っている千恵を見て、