「うわー、すごい! やったね、お兄ちゃん!」僕も嬉しくて興奮していた。
僕は気を取り直して、「ノコギリクワガタの雄を見つけてやる!」と意気込んで、また山の奥に入って行く。だが、探せど探せど、クワガタ虫やカブト虫は簡単には姿を見せてくれず、「あーあ、つまらない。もう帰ろうよ、お兄ちゃん」と声を張り上げた。
すると兄は「ジョニー、静かにしろ、ノコギリクワガタの雄がいる。逃げられちゃいけない。静かにしていろ」と言うと、さっと手でノコギリクワガタの雄を捕まえてしまった。
「やった! やった! お兄ちゃん! すごいねぇ!」僕は兄の大成果に飛び上がって喜ぶ。
「お兄ちゃんは天才だよ! それに手でクワガタ虫を捕ってしまうなんて、すごい!」
「ジョニー、オマエと一緒に来たから良かった。ありがとう。友達のケンと来た時は全然ダメだった。クワガタ捕りにはオマエと一緒に来るのが良いな」
兄は虫捕りをうまくやる。僕には絶対にできないことを器用にやる。クワガタ虫は茶褐色に輝き美しくカッコいい。
兄は誇らしげに手にして、「ジョニー、オマエも持っていいぞ」と言う。
「えっ、いいの? ありがとう」と僕は言うものの、「でも、どうやって持てばいいの? 挟まれたら大変だよ」と言って、なかなか持てない。
「だから、ほら、指の上に乗せればいい」兄はそう言うが、僕は怖くてとうとうクワガタ虫を手にすることもできなかった。こんなに臆病だと何をしに虫捕りに来たのかもわからない。いくらクワガタ虫を見つけても、これでは結局、捕ることはできないではないか。
「しょうがないなぁ。まぁ、でも、クワガタ虫を雄、雌、一匹ずつ捕れたから良かった。オマエも一緒に飼おうな」と兄は言ってくれた。
兄と僕は、大きな成果……、と言っても、兄だけによる大成果だが、二匹のクワガタ虫を持って家路についた。
家に帰ると姉が「虫捕りはどうだった?」と早速聞いてきた。
僕は「クワガタ虫を捕ったよ!」と報告。
「ジョニー、すごいじゃない!」と姉。
「うん、うん、やったよ!」と僕。
その横で、兄は黙っていた。そして、虫を飼うためのプラスチックのケースに土や木くずなどを入れて、クワガタ虫を飼うための準備作業をしていた。
僕は、クワガタ虫を手に乗せるのは怖いけれど、綺麗で威厳のあるクワガタ虫自体は嫌いではない。ケースに入っていれば問題ない。美しいクワガタ虫をじっと見ては、その動きを観察していた。