午後3時を過ぎていたので、表玄関のシャターが下りていたのだろう、支店長は自ら、駐車場に近い行員通用口まで案内した。
竹之下に続いて出た松葉は、もう一度よろしくお願いします、と言って外に出た。支店長はドアの外まで出てきてお辞儀をした。担当の古賀も自動ロックのドアが閉まるのを押さえながら、お辞儀した。
外は雨が降り出していた。2人は、小走りで車に向かった。合羽を着た顔見知りの駐車場係の平川が慌てて傘を差し出した。松葉はどうも、と言って車に乗り込んだ。
ハンドルを握った竹之下が、松葉に聞いた。
「手形の割引はしてくれるのでしょうか」
「大丈夫だよ、心配いらない。但し、それには条件が付いてくるだろう」
新たな条件を引き出すセレモニーを鹿児島第一銀行はしようとしている、と松葉は思ったが、竹之下にはそのことは言わなかった。
「条件を付ける前に、彼らは我々の説明を聞き、関東工場の現状をしっかり把握すべきではないですか。自分たちの目で確認すべきでしょう」
竹之下が怒った口調で言った。
「そうだが時間がない。先ずは、手形を割引いてもらわなければならない。時間がないというのが、彼らの作戦を有利に展開させるのに、都合が良いということかもしれない」
「作戦ってどんな作戦ですか」