五 美しきヴェネツィア、考えるべき環境問題

こうしてヴェネツィアでの滞在も残り少なくなる中、一向は数名のグループに分かれてゴンドラに乗船した。ゴンドラと言えば当時の私にとっては千葉にある水辺のアミューズメントパークのものしか想像できなかったが、実際乗ってみると数々の発見があった。

千葉にある水辺のアミューズメントパークのゴンドラは十人から二十人ほど乗船できるが、本場はもっと小ぶりだ。夏場はどうなのかはよく知らないが、ゴンドリエーレは帽子や赤いスカーフ、ボーダーのシャツではなく全身黒ずくめでサングラスをしている。

そのゴンドリエーレにも個性があり、私たちを担当したゴンドリエーレは道すがら日本の怪盗ものの人気アニメのテーマを余興で歌っていたが、別のグループの方の話を聞くとそのゴンドリエーレは一切喋らなかったという。リアルト橋、ドゥカーレ宮殿の「ため息橋」など有名な場所は通るが、それ以上に民家と思われる裏通りの水路を辿ることも多かった。

テレビのドキュメンタリーで見るような、水路の上に洗濯物がかけられている光景を実際に見た時は特に感動した。ゴンドラは基本的に観光客向け、地元では結婚式や葬儀で使う特別なものらしいが、地元民の本当の生活が垣間見える点で、ゴンドラは世界で最もユニークな乗り物ではなかろうか。