第2章 アルミ鋳物の営業開始
出会い
松葉は、早速電話を入れ、森山さんの弟さんを紹介してもらうことにした。1時間もしないうちに、ホテルに弟さんから電話があった。
松葉は、弟さんとは面識はなかったが、とてもフレンドリーで人の良さそうな印象を受けた。
松葉が、会社のアルミ鋳物製品について電話口でひと通り説明をすると、彼は、
「そういう製品だったら、建築設計事務所にPRした方がよいのではないですか。私は、インテリア関連の仕事をしていて、インテリアデザイナーは知っていますが、建築家は知りませんね。
うちの会社に、設計事務所に出入りしている同僚がいるので、その人を紹介しましょうか。うちの会社に来られませんか。彼も今いますから、今ならよいと思いますよ」
松葉は、ありがとうございます、とお礼を言って、早速その会社に向かった。
京橋の昭和通りに面したビルの一角に、その会社はあった。
受付で、森山さんにお会いしたいと申し出ると、「お待ち申し上げておりました」とすぐさま応接室に案内された。
初めてお会いする森山は、「兄貴が、お世話になっています。森山です」と名刺を差し出した。
「いやいや、こちらがお兄さんにお世話になっています。ちょうど、わが社も工業デザイナーの力を借りたい、と思っていたところでした」そう言いながら、松葉も名刺を渡した。
「そうでしたか、お役に立てたらよいですけどね。電話でお話しした伊藤を紹介します」
「松葉です。今日は突然申し訳ございません。よろしくお願いいたします」と言いながら、名刺の交換をした。
「大体、森山から聞きました。ちょうど、今から前山設計事務所に行こうしていたところでした。ご一緒しましょう。この事務所は日本を代表する設計事務所です。なかなかアポの取れない事務所ですが、今回は先方から打合わせがしたいと電話を頂きました。