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お父さんの手紙
だから、そのあと、お母さんといっしょにまた学校に行って、先生にあやまりました。だいちゃんのお母さんは、来ませんでした。
だいちゃんのお母さんは、だいちゃんが一年生のときに、家を出て行ってしまったのだそうです。だいちゃんがこまったことをしたり、おちつきがなくなったのは、そのころからなんだと、みはる先生が言っていました。
お父さん、ぼくはどうしたら、だいちゃんとなかよしになれるでしょう。
十一月一日 結城まこと
まことへ
おてがみありがとう。そして、「ウィーンのおどり」の合かくおめでとう。
まことのがんばったようすがとてもよく伝わってきて、お父さんはてがみをよみながら、とてもうれしかったです。
なによりも、まことがいろんなことに負けないで、まっすぐ自分のもくひょうに向かっていってくれたことを、お父さんはうれしく思います。
だいちゃんとけんかをしてしまったようだけど、そのあと、だいちゃんとはおたがいにあやまりましたか。どっちがわるいかなんて、きっと、さいごまでだれにもわからないと思います。
大切なことは、そのあとどうするかだと思います。みんなではなし合ったことは、三組のみんなにとって、きっといいけいけんになったことでしょう。
まことが、りんのわる口を言われておこったことは、お父さんはせめません。お父さんだって、他人からまことのことをわるく言われたら、きっと、ものすごくおこるでしょう。
自分のわる口を言われるよりもおこるだろうと思います。だからまことも、人のわる口は言わないようにしましょう。先生の花びんをわってしまったことは、いけなかったと思いますが、はんせいしてお母さんとちゃんとあやまりに行って、えらかったですね。
しんぱいなのは、だいちゃんですね。お父さんが思うに、だいちゃんは、まことのことがうらやましかったのではないでしょうか。
まことには、お母さんがいて、りんがいて、かぞくみんななかがいいのが、うらやましくて、そうしていじわるをしてしまったのかもしれません。
お母さんがいないことは、大人でもつらいことなのに、だいちゃんは一年生のときからお母さんがいなくなって、とてもかわいそうですね。