第三章

おばあちゃんは私の握った手を支えにするようにして立ち上がる。それから、お母さんたちの方を見て言った。

「ちょっと今日は疲れてしまったわ。またお話聞きたいわね」

「ああ、ええもちろん。この先は……」

藤井奈々子さんが言い終わる前に、おばあちゃんは背中を向けた。 私はおばあちゃんを支えながら、おばあちゃんのベッドのお部屋に連れて行く。

「おばあちゃん、だいじょうぶ?」

そう聞きながらゆっくり歩き、横から表情を見たけど、おばあちゃんはちょっと困惑したような顔をしてた。

確かにすんなり受け入れられるような話ではない。 私も今、ここに何が起こっているのかも把握できないでいたから。藤井さんはちょっと不思議な感じ。静かで穏やかだけど、それでいて言葉はしっかりと話す。気性が激しい人には見えないけれど、一語一句を伝えるのだという意思が感じられた。

おばあちゃんはベッドで休むと言ってから、本当にすぐに眠ってしまった。

おばあちゃんも自分の家を離れて施設に来ている。頭の痴呆の症状もあるから、おばあちゃん自身も混乱しているだろう。

そこに、今回の出来事があったのだから疲れて眠ってしまうのも頷ける。私は、おばあちゃんの手をベッドの暖かいところに収めて離れた。後でお母さんに聞いたら、藤井奈々子さんは帰っていったらしい。 またの機会を作って欲しいと言っていたそうだ。

何日かして、私は言われた。

「杏南、そろそろ高校受験の勉強も大変になってきているとは思うけど。今度のお休みは少し時間ある?」

「えっ、あるけど」

私が答えるとお母さんはおばあちゃんの事を話し出した。「また会って話を聞きたい」とそういう風におばあちゃんが言ったそうだ。私と一緒にだ。 もちろん、二つ返事で行くことにした。楽しいからじゃないけど、おばあちゃんと話を聞きたいと私も思っていたから。

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私はいくつも綺麗な場所を巡ったの。

クジラは海を渡り、どこの国にも連れて行ってくれた。

とても綺麗な島にも行ったのよ。ボラボラ島っていう所。

可愛い名前ね。その島は海の色がとても明るくって、青い絵の具を溶かしたみたいだった。砂浜もサラサラだし、気温もちょうどよくて静かなの。私はウミガメさんと一緒に小舟でその島に入ったわ。