【第三章】
15 日常生活への復帰訓練
■2021年12月12日
骨盤と恥骨・仙骨の骨折により、失った排尿排便時の感知機能はなかなか再生できない。深夜含め1時間ごとに1日24回、介添えしながら、トイレに行った。
10分間の事前準備(血圧を安定させコルセットを装着し歩行器準備)を毎回繰り返し、妻には地の果てほど遠い2メートル離れたトイレにおびえながら行く。下の介護ばかりで申し訳ないと朝方と夕方は必ず泣く。
「これは誰でもいつの日か通る道なので、まったく気にするな」……と慰めるのが精一杯だった。トイレ回数が減り始めるのは、排尿感知機能の再生が始まるサイン。大学ノートに、全ての時間に関して克明に記録していくこととした。
■2021年12月13日
腰から左脚の先までの痛みとしびれは座る時に最も厳しくなる。1回につき5分経過すると、着座自体に激痛が発生する。座ることを回避すると寝たきりになる。どちらに進んでも地獄。
リハビリの医師に相談してみた。リハビリ医師からは2つのポイントで対処法等の説明を頂いた。
・左脚の付け根の筋肉がゼロになり、座るために必要な尻を保護する筋肉もない。現時点は加重が皮と骨と神経をプレスして激痛が走っている。これは筋トレで保護筋肉をつければ解決できる。
・落下時に腰椎と骨盤と仙骨を骨折した際に、左脚につながる神経が破壊されたことによる痛みは現在の医学では解決不可能。一生涯をかけて付き合いマッサージなどでごまかし続けるしかない。
割り切れないが、今は頭に押し込んだ。座る行為は日常生活では基本動作。本日学んだ腰から尻にかけた筋トレとマッサージは毎日実践して、良い方向に1ミリでも近づける。放置すると固まる肉体。足踏みしていること自体が最もいけない。
■2021年12月14日
朝5時から1時間だけ、私は帰宅した。早く病院に戻らないといけないと、ハンドルを持つ手に力が入る。妻が退院しても安全でいられるような自宅の環境を少しでも整備したかった。