六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内
時刻は十二時五十五分、静かに仲山は何かを待っている。
「また連絡は来るはずだ……」
問題は、限られた会話の中でどれだけ相手から情報を聞き出せるかだと仲山は考えていた。ポケットから取り出した白い紙の裏にメモを取り始める。その様子を見て、娘の凛は耳当てを外して話しかけた。
「ねえ、何してるの?」
「ああ、凛。大丈夫か? パンは食べたか?」
「うん、おいしかった。お父さん、食べないの?」
「次の電話が終わったらかな」
「……ふーん、そうなの」
九歳という年齢ながら、凛もただならぬことが起こっていると察しているのだ。仲山は娘に謝った。
「こんなことになって本当にすまない。凛の言う通り、最初からメリーゴーランドに行けばよかったな」
「ううん、いいよ別に」
凛は口を尖らせながら首を横に振った。
「そうか、この観覧車を降りたら行こうな。もう予定表はなしだ」
そう言うと凛は、うん、と快活な声で頷いた。
「ねえ、でも、いつ降りられるの? もうお姉さんと話したから大丈夫だよね、ねえ」
心細い声で問われて、仲山は少し迷う素振りを見せた。嘘をつくことはできるが、その場しのぎの嘘はもうやめなければならないだろうと考えたのだ。
耳当てをさせているとはいえ、『小人』からの音声はある程度聞こえているはずだと、仲山は思う。それに、これからもゴンドラが落ちないとは言い切れない。
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