六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内

今自分達が乗っているゴンドラも落ちる可能性がある。仲山は、娘がそれに気付かないでいて欲しいと心から願った。

「いいや凛、まだわからないんだ。お姉さんが、この観覧車を動かしているわけじゃないからね」

「じゃあ誰が動かしてるの?」

「遊園地の、偉い人だよ。だからすぐには動かないんだ」

実際は、ドリームアイの制御は『小人』と名乗る人物に乗っ取られている。ここまで待って動かないということは、警察は乗っ取られたシステムを取り戻せていないのだと仲山は察した。だから、まずは犯人の特定が重要になるだろうと。

自分の存在と証言は警察に伝わったはずだと仲山は考えていた。警察はどんな小さな情報でも収集したい組織だ。ドリームアイで実際に乗客を仕切っていた滝口美香に話を聞かないわけがない。

しかし、警察はすぐには犯人捜しに動かないだろうというのも、仲山は推測できていた。警察が今持っている情報からでは、事故としか判断できないのだ。

「……ダメだな」

スマートフォンを操作しながら仲山が呟く。『小人』の言っていた通り、本当に電波が届かなくなっていたのだ。今は時刻を確認してオフラインで使えるアプリを使うくらいしかできることがない。

これは、他のゴンドラの乗客も同じ状況だろう。ゴンドラ内の誰もが、警察に犯人から連絡があったことを伝える手段がないのだ。

ゴンドラ内にあるドリームアイの運営局との直通回線は、一度は使えたが、もう一度かけてみたら通話ができなくなっていた。

凛が暇を持て余しているのでスマホを貸してやりたいと仲山は思ったが、電池切れを起こしては困るので、それもできない。