「いない?」

「違うよ。サンタはね、いるんだよ。友達が言ってた」

そうか、と仲山は呟く。夢を壊してはいけないと今更思ったが、もう娘はその秘密を知っていそうだ。そこで、凛はいたずらっぽい笑顔で仲山に耳打ちしてきた。その表情は昔の惟子に似ていると仲山は懐かしい気持ちになった。

「サンタは、親なんだって」

お父さんからはぬいぐるみね、ママは何をくれるかなあ、と凛は呟く。そうか、ともう一度頷いて、仲山は凛に再度耳当てを着けさせた。そろそろ十三時、連絡が来ると見込んでいるのだ。

滝口はシステム管理者と話ができただろうか、と仲山は考える。システム管理者側としては、乗っ取られただなんて話は普通外部には漏らさないはずだ。しかし、実際にドリームアイが停止した現場にいた滝口ならば、話を聞き出せるのではないかと仲山は思っている。

ただ、犯人がいるという話を滝口自身は信じていないため、きっと今ごろ気持ちが揺らいでいるだろう。警察を信じるなとは伝えたが、どう動いてくれるかはわからないのだ。できれば警察側にも協力者を作っておきたいところだと仲山は考えた。

「しかし、難しいだろうな……」

そう呟いたところで、ちょうど音が鳴った。ゴンドラのスピーカーではなく、ゴンドラ内の固定通話からだ。さっき使えなくなっていたはずなのに、と疑問に思いながら仲山が受話器を取ると、あの合成音声が流れてくる。

『やあ、ごきげんよう』

「……『小人』、か」

観覧車の運行だけではなく、通話システムも乗っ取られているということに仲山は気付いた。

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