第一章 コスモスの頃
彼女と出逢ったのは高校三年の秋
季節外れの転校生
全てはそこから始まった
当時、通っていた高校の近くにある小高い丘一面にコスモスが咲き乱れていた
秋も半ばになった頃だった東京から僕のクラスへ転校して来たのが彼女
よくある話だけれど……
それが、彼女との出逢いだった
一.転校生
僕には、朝のささやかな楽しみがあった。
ケタタマシイ目覚まし時計の音と闘いながらもその楽しみのためだけに布団から出る自分。
秋もすっかり深まり、僕の生まれ育った町は、朝晩には、めっきり冷え込んでいる。
少し身震いをしながら制服に着替え、二階にある自分の部屋から階段を下りて一階のリビングへ向かう。
キッチンの方では、もう既に朝食を終えた父と二つ下の妹が、ここ最近は毎朝のことながら、何やら深刻そうな話をしている。