Ⅱ 19ジャンルにも分類できる「感染小説」のテーマ
病原体(ウイルス、細菌、生物など)によって起こされる感染症が様々な形で小説を構成している。この項ではその概要をまとめた。
●将来、人類を脅かす感染症パンデミックを予言した小説
『復活の日』/小松左京
致死率100%のウイルスと核ミサイルの脅威により人類絶滅の危機が現実化するなか、各国の南極基地で人類再生に向けて動き出す人々を描く人間ドラマ。
『H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ』/岡田晴恵
H5N1型鳥ウイルスから変位した新型インフルエンザ感染のリスクは2009年でも残っている。もし、このウイルスが日本に上陸したらどうなるのかそのシナリオを描く。
『夏の災厄』/篠田節子
小都市で発生したウイルス感染症をめぐってワクチンに対する政府の対応、反ワクチン運動、医療行政の貧困などの問題に住民が多角的に取り組む姿を描く。
●政府、厚生労働省、地方自治体の感染症対策のまずさや不備を描いた小説
『隠されたパンデミック』/岡田晴恵
新型コロナウイルスが蔓延する10年前に、政府の新型インフルエンザ対策の遅れを指摘し適切な感染症対策の啓蒙に取り組む姿を描く。
●コロナ禍をめぐって政治、行政、医療が織りなす混沌とした人間模様を描いた小説
『コロナ黙示録』/海堂 尊
コロナ・パンデミックに展開する初期のコロナ禍の状況を描いている。
『ナニワ・モンスター』/海堂 尊
浪速府で発生した新型インフルエンザの報道が激しくなり、政府は浪速を経済封鎖した。その裏には霞が関の陰謀がからんでいた。
『スカラムーシュ・ムーン』/海堂 尊
新型インフルエンザ騒動で揺れる浪速の街で、ワクチンが不足する事態が起こる。彦根新吾医師が多量のワクチン製造に取り組む。
『コロナ狂騒録』/海堂 尊
日本のコロナ禍の諸問題をめぐる政治と官僚の関係や日本の医療問題がやり玉にあがる。
●感染症対策として政府や地方自治体が個人の自由を制限する不条理を題材にした小説
『封鎖』/仙川 環
感染症が拡大することを恐れた政府が一つの集落を封鎖したことに対する住民の抵抗を描く。
『首都感染』/高嶋哲夫
世界中に猛威をふるうウイルス拡大を防ぐため日本政府は東京封鎖を宣言した。
『首都圏パンデミック』/大原省吾
長崎の離島で発生した猛毒のウイルスが東京国際空港に向かう旅客機の中で蔓延した。ウイルスが首都に持ち込まれることを防ぐ難題にどう立ち向かうのか。
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