序章 教材の中の「高天原」

最後は、章末のコラム「日本の天皇と中国の皇帝」のところで、

「日本における〈天〉の思想は中国とは異なり、神話に登場する〈高天原(たかあまはら)〉に由来します。天皇の称号 (しょうごう)に〈天〉がふくまれるのは、高天原の神々の中心であった太陽神天照大神(アマテラスオオミカミ)の直系の子孫という意味からです。」

と神々を祭る聖なる存在としての天皇(スメラミコト)の意味と、その権威の由来について明快に説かれている。

この新版の自由社歴史教科書は、すでに文部科学省の教科書検定を通過し、市販本も市場に広く流通している。教科書検定においては、教科書調査官が専門的研究者として学界の研究動向をふまえ調査に当たり、厳格な審議が行われる。よって、「たかあまはら」と訓ずることについては、公的にも認められていると考えることができる。

令和の改訂では、いかがであろうか。他社は、「たかまがはら」のルビのままであるが、自由社の文部科学省検定済み中学校歴史教科書(写真2)は、その後の教科書改訂(令和3年)においても「高天原(たかあまはら)」のままとなっており、現在に至っている。

写真2 現行の検定済『新しい歴史教科書』(自由社) 国宝の「合掌土偶(がっしょうどぐう)」(縄文時代後期の青森県風張1遺跡出土)が表紙中央に載っている 筆者撮影(掲載許諾済)