ありがとう『あまちゃん』
夫はこのところ、今まで六十五キロあった体重も四十二キロとなり、自力では立てない体力となりました。
呼吸器のカテーテルも今まで自分で操作できたのが、このごろは指先が震えてしまい、持てなくなりました。一日中ベッドに縛り付けられての状態の毎日は『過酷』の一語に尽きます。
この生活に少しでも変化をつけ、何か楽しめるものをと、病室にテレビを入れてみました。しかし夫はあまり興味を示さず、せいぜい一日延べ一時間ぐらいの視聴という程度でした。
ところが、このところ夫は、毎朝八時には必ずテレビにスイッチを入れさせるのです。それはNHKの朝の連続テレビドラマ『あまちゃん』を観るためです。
この番組が始まって以来、緊急入院時以外は一度も観ることを欠かしたことがありません。このドラマは、夫の出身地、岩手県久慈市が舞台なのです。
幼い日、みんなと遊びまわった久慈海岸、ナズカスイ?(懐かしい)東北弁、カゼ(『うに』のことを久慈ではこう呼ぶ)、めかぶ、わかめなどの海産物、どれ一つをとっても、夫の胸は張り裂けんばかりの懐かしさでいっぱいのことでしょう。
もし言葉を発することができるのなら、どんなにか私たちにたくさんの解説をしてくれたことでしょう。本当に悔しく思います。病気を恨みたくなります。
夫はこの『あまちゃん』のドラマの久慈の景色の中に、自分を同化させて、昔の自分に戻って、思いっきり飛び回っているのではないかと思うと、なんだかいじらしくなります。
『あまちゃん』ありがとう。
まだまだ頑張ります。昭四郎を、いや『チーム昭四郎』をお見守りくださいと私は心の中で叫んでいました。
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次回更新は7月23日、11時の予定です。
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