上杉病院グループの会長や理事長なら、君が反省して退職届を書くのなら、身元引受人になってくれるかもしれない」

ここまでを、一気にまくし立てた。その勢いは、まるで興奮状態にあるかのように見えた。

[金井先生の公判]というのは、その半年ほど前に、上杉病院グループの金井医師が、反社会的勢力の組長に、[収監を免れるための偽診断書を書いた]とされた事件だ。

これは、京都府立医科大学の当時の学長や院長らも巻き込み、上杉病院グループからは、金井医師と、直接に組長の窓口担当となっていた小野医事部長の2人が逮捕され、大々的に報道された。

結果的には、起訴されたのは、金井医師1人であり、後日、彼も、無罪判決を受けた。

しかし2018年9月14日時点では、まだ結果は出ておらず、病院側は、何としても、事を表沙汰にしたくなかったのだろう。

加瀬弁護士は、まるでそれが自分の功績であるかのように得意気に、

「金井先生は、かたくなに退職届を書くことを拒否した。だから懲戒解雇にしてやったんだ」とも言った。

そして、後日オカンから聞いたところによると、この時、ほぼ同時進行で、オカンも、この体験を共有していたのだ。

この日も、朝のうちに、拘置所へ面会のために出向いてくれたのだが、受付で、

「今日は、検事調べで一日中検察に行っているため、面会はできません」

と言われ、そのまま、中之島にある法律事務所に移動し、堂島川に面した一室で、杉井弁護士、佐田弁護士と、打ち合わせを行っていた。

そこへ、「篠田検事からお電話が入っています」と、事務所スタッフから連絡が入った。

オカンは、「何ごと?」と、心臓が止まりそうなほど、驚いたらしい。