第一章 元気になるってどういうこと?
なぜ人は病気になるのだろう
1つ目に説明した発熱も脳による症状でした。ウイルスや寒さによって身体にダメージが与えられると、脳はそれに対抗しようとして体内の温度を上げます。
これが発熱のしくみです。よく風邪の時に解熱鎮痛剤(げねつちんつうざい)を飲みすぎるといけないといわれているのは、人間が持つ自己治癒能力を(じこちゆのうりょく)低下させることになるからです。
薬で熱だけ下げても、身体の疲れやウイルスが残っていては根本的な治療にはならないのです。それよりも栄養のあるものをしっかり摂(と)り、ゆっくり静養すれば大抵の熱は数日で治まります。ただし、高血圧も発熱も薬はいらないとは言いません。
人の身体は頑丈なようでとてもデリケートです。体温が1℃違うだけで、人の身体には大きく作用します。血圧についても同様です。一瞬ならば大丈夫でも、慢性的(まんせいてき)に血圧が高い状態が続くと身体全体の血管に負担を与えてしまいます。
これらの場合は薬が効果を発揮します。脳のはたらきによる病気には、脳そのものは正しく機能して起こるものも多くありますが、脳そのもののはたらき方が暴走したり、間違えて起こる病気もあります。
その中で今回取り上げるものは、近年話題になっている発達障害、代表的な精神疾患、そして依存症です。特に精神疾患について少し詳しく説明したいと思います。
発達障害について
発達障害とは、「生まれつきみられる脳のはたらき方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がみられる状態」をいいます。代表的なものに「自閉症スペクトラム症(ASD)」、「注意欠陥多動症(ちゅういけっかんたどうしょう)ADHD)」、「学習障害(LD)」などがあります。
ASDは、一般的に自閉症といわれてきた人の他に、以前話題になっていたアスペルガー症候群も現在ではASDの一部に分類されています。また、自閉症の中でも知的な能力は高いけれど、人とのコミュニケーションを取ることが苦手な高機能自閉症などもあります。
実は、人とはあまり関わらずに、何かに没頭するタイプの学者などには、このタイプの人が多いといわれています。ASDの人の多くは、音や光などの普通はあまり気にならないものに敏感で、それに大きく反応してしまう場合が多くあります。
ADHDはその名の通り、注意力や集中力が続かなかったり、極端にそわそわとして落ち着きがないのが特徴です。カッとなったり、考えないで衝動的に行動や発言をしてしまうことも多いです。
昔でいう、落ち着きのない子どもや片付けが苦手な子どもで、これらの症状は大人になるにつれ、また適切な対処の仕方を学ぶことによって徐々に改善されていく場合も多いです。