第二章 偽りの告発

わたしは紙面をバサバサめくっていったが、突然、ぎょっとした。

先週号のいちばんはじめの記事に、ミホの顔写真が載っていたからである。

まさか、と思ったが、その意地の悪そうな大きな目はまちがいなくミホで、写真の下に、薬充(やくみつ)ミホ、と名前も出ている。その斜め下には、焼失した縫製第三工場の写真もあった。

見出しには、『元女工が涙の告発 城屋の深い闇』とあった。わたしは狐につままれたような気がした。

告発? 深い闇? 落雷事故のことではないらしい。ミホはなにを言っているのだろう。

わたしは記事を注意深く眺めた。

記事の文章は見にくかったが、つまりは、城屋の工場はひどい所だった、ということをミホは訴えているらしい。

女工たちは安い賃金しかもらえなかった。それなのに、まともな休憩もなく、夜遅くまで働かされた。高熱が出ても無理矢理働かされた。ノルマが達成できないと、罰として賃金を減らされた。

管理職の社員は異常に厳しく、暴力をふるわれることもあった。寮の食事はひどく貧しく、みんないつもおなかを空かせていた……。

なんだ、これ。

翌日、わたしはいつもより一時間ほど早く目が覚めた。

わたしにあてがわれたのは、一階の離れにある、六畳の一室だった。朝はまぶしいほど光が入った。