まるで患者に対するみたいで、自分でそのことに照れてしまった。
「どうですか、今日は少し話を煮詰めてみましょうか」
「オ晩デゴザイマス、宜シクオ願イ致シマス」
骸骨はカシャカシャと音を立てながら向かいの椅子に座った。
「昨夜は酔っていて失礼しました」
そう言って彼はにこやかに笑った。だがその笑顔には一抹の愁いがあった。
今日の外出で彼は彼なりに考えとか覚悟を取りまとめたに相違ない。それが今の笑顔であり、愁いでもあるのだろう。標本が生きているなどという人を喰った出来事に、彼の医師としての心は少なからず傷ついていたに相違ないのである。
一方骸骨もまた憂い顔だった。何か言いにくいことがあるらしかった。愁い顔の医師と憂いを含んだ骸骨が夜の診察室で向き合っていたのである。
暫しの沈黙が訪れた。先に口を開いたのはやはり渋谷医師の方だった。
「どうも君は動作がぎこちないというか、口調が固いねえ」
「ハア、長年立チ詰メダッタモノデスカラ‥‥」
そう言いながらも口調の硬さは変わらない。
こうして素面で骸骨と向き合うのは格別に奇妙なもので、渋谷医師は感慨深そうに相手を眺めていた。