その晩はぐっすり眠れた。そして夢にマサキが出てきた。空港のトイレの前でばったり会って会話をしていた。
朝に目が覚めたら何を話したのかまったく覚えていなかった。でも、なんだか楽しかった。気がついたら慢性の肩こりや頭痛が少し治まっていた。
その後、衝撃の訃報が入ってきた。
一緒に北海道のコンサートに行った友人の友希恵さんから久しぶりのメール。と思ったら、あのとき一緒に来ていた友希恵さんのお友達が亡くなったという。
そういえばコンサートのとき、ちょっと体調が悪そうで顔色が悪く頻繁に咳をしていた。喘息のようなぜーぜーした咳だったので気になって何度も大丈夫?と聞いた。
しかし、座り込んでいた彼女が会場が暗くなって音楽が鳴った途端跳び上がって立ち、ずっとうちわとペンライトを振って跳んでいた。だから大丈夫かと思って安心していたのに。
しかし、あのときすでに末期がんで、立っていることが不思議なほどの体調だったという。彼女はどうしてもマサキに会いたくて力を振り絞って来ていたのだ。
コンサートのあと、私は一人で余韻にひたりたいからと二人と別れてホテルに戻ったし、初めましての人だったのであんまり会話をしないまま別れたのが最期になった。
あのときタクシーを予約していたのは体調が悪いからだったのか。友希恵さんは、「マサキがいなかったら彼女はもっと早くに亡くなっていたかも」と言う。
同じマサキファンの同年代の女性が病気を押してコンサートに行って元気をもらって最期まで必死で生きたことに胸がいっぱいになった。
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