お嬢様の崩壊

今しずかがいい年をして若いアイドルを追いかけていることは、母には不思議なことでしかないようだった。それでも、帰りがけに母は自分の財布から三万円を出して渡してくれた。

「これで何か美味しいものを買って帰りなさい。どうしても疲れたときにはお惣菜を買いなさいね」と言ってくれた。嬉しかった。

実家にも長居はできないし、家にもまっすぐ帰りたくなかった。せっかくもらったおこづかいで美味しいものを買おうと帰りにデパートの地下に寄った。

美味しそうなお惣菜が所狭しと並び目移りしたが、何を見ても高い。一人分ならまだしも家族四人分を買おうとするとすぐに数千円になってしまう。

うろうろした挙句、京都のお店の上品な野菜の煮物や海老しんじょなどを買う。自分が食べたかったのだが、よく考えると子どもにはあんまりおかずにならないな。結局、家の近くでから揚げなども買って今日は楽をしようと思う。

いくつになっても母親とはありがたいものである。

年が明けて職場にもすっかり慣れて楽しく仕事をしていた。そんなとき、派遣会社から連絡があった。派遣先の会社が経営不振のため業務縮小になり、しずかたちの勤めている部署はなくなり、派遣社員はすべて契約終了になるという。

(そんな……、せっかく慣れてきたのに)いわゆる派遣切りというやつである。

派遣というのは、ある程度時給が高い割には安定せず、賞与もないし、いつ切られるかわからない。