第二章 晴美と壁

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いやに普段着は晴美を褒めちぎった。デイケアのメンバーは若いのに極端に太っている者、逆に痩せすぎている者が多く、晴美のように理想的な体型を保っているのは若白髪と幸枝以外にはいなかった。

晴美はそんなメンバーの体型を見ていると、次第に違和感を覚えるようになった。

晴美は高校時代に七〇キロになり、太った体験を持っている。社会人になり働き始めてからは今のような均整のとれた体型となったが、いま、つくづく思うのは自分にとっての理想的な体型とは体が動きやすいということだ。

思ったように自由自在に体が動くこと、たったそれだけのことでも人生って素晴らしい。生きてきてよかったとつくづく思える。

それほど体型は人間にとって重要な要素なのだと晴美は思う。それに好きな服も自在に着られ、お洒落もできることだ。最近では晴美はジーンズに凝っている。何よりも活動的だからである。

――晴美は幸枝と友達になりたいと思った。

みんなが一列に並んで棚のおかずの皿を取っていく。晴美は鯖の煮付けと納豆と小松菜のおひたしとワカメの味噌汁をお盆の上に載せた。会計は最後だが、しめて四百円だった。セルフサービスだがランチとしては安いと感じた。

さて、どこへ座ったらいいのだろう。メンバーたちは六つあるテーブルにそれぞれ座っていく。晴美は困ってあっちへ行ったり、こっちへ行ったりうろうろしていると、薄化粧が、「晴美さん、こっちへいらっしゃい」と大きな声で手招きをする。

彼女のテーブルは一つだけ空いていて、すでに五人が着席していた。幸枝さんはどこにいるのだろう。でも、いいか。自分から近づいていく勇気がないのだから……。

「はぁーい。どうもありがとうございます」

晴美は明るい声を出して薄化粧のテーブルに座った。すでに食べている者もいた。小さい声で盗み食いでもしているようにこそこそ喋っている者もいたが、どこのテーブルでも全体としては静かだ。