「お母さん、なんとか司会はできたけれど、とても疲れたわ。昼食は何も食べられなかったけど、いまはとてもお腹が空いたわ。何か、食べる物、なぁい?」家に帰るや否や、晴美は母親に言った。「饂飩の残りがあるので食べる?」「うん、ほしいわ」食卓に饂飩が置かれた。大好物の冷し饂飩なので、とても晴美のお腹を満足させた。「あぁ、美味しかった。何だか緊張感もすっかりとれてきたみたい」晴美はやっと安堵した。普段の晴美…
[連載]近づく果実
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小説『近づく果実 』【最終回】鈴木 寂静
「ありがとう、お父さん」…家族みんなの顔も頬が緩み、兄はつい「ワァ、ハハハー」と声を上げた。その笑い声はみんなに伝染した
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小説『近づく果実 』【第19回】鈴木 寂静
デイケアで「親孝行」をテーマにした話し合いで初めての司会。拍手をもらい、なんとか司会が務められたことに安心していたが…
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小説『近づく果実 』【第18回】鈴木 寂静
なんだか嬉しそうにご飯を食べる父親。家族の明暗は娘たった一人にかかっている?
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小説『近づく果実 』【第17回】鈴木 寂静
何くそ、勝負の世界なんてたかが迫力の違いだ!責任の重さに打ち倒されそうになりながらも、負けず嫌いの根性が…
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小説『近づく果実 』【第16回】鈴木 寂静
「ありがとうございます。薄化粧さん」うっかり、自分の中で勝手につけていたニックネームで呼んでしまった…
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小説『近づく果実 』【第15回】鈴木 寂静
デイケアで初めての交流。「趣味はない」という人が多いなか、晴美は立ち上がり…
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小説『近づく果実 』【第14回】鈴木 寂静
えっ、自己紹介だって――。私、できない。胸の動悸が激しく波打ち、顔が紅潮してきた
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小説『近づく果実 』【第13回】鈴木 寂静
「あ」を書くのがこんなに難しいなんて。額には脂汗が滲み、その汗が半紙にポタリポタリと落ち…
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小説『近づく果実 』【第12回】鈴木 寂静
嬉し恥ずかし緊張の書道塾。シャボン玉がすうーっと空に溶けたように気分は晴れやかに
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小説『近づく果実 』【第11回】鈴木 寂静
人生の岐路に立つ晴美。「四つの条件」クリアに向け人の輪の中へ
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小説『近づく果実 』【第10回】鈴木 寂静
移住先の「四つの条件」を晴美は満たしていなかった…。移住のため、努力することを決意
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小説『近づく果実 』【第9回】鈴木 寂静
「そんなこと、親から聞いてない…」『円い町』へ移住に必要な四つの条件とは?
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小説『近づく果実 』【第8回】鈴木 寂静
四国にあるという精神障がい者を「善常者」と呼ぶ町。行ってみないかという提案に晴美は…。
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小説『近づく果実 』【第7回】鈴木 寂静
自分が障がい者になって初めて、いかに上から見下していたか知る
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小説『近づく果実 』【第6回】鈴木 寂静
「給料の三倍は広告を取ってくれ」壊れたレコードのように繰り返す上司の言葉
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小説『近づく果実 』【第5回】鈴木 寂静
「広告を取ることは人間的な魅力が必要なんだよ。」営業先の店長がライトグリーンのスーツ姿を気に入ってくれて
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小説『近づく果実 』【第3回】鈴木 寂静
ピンクのスーツに身をつつみ飛び込み営業!? 若手女性社員の奮闘!
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小説『近づく果実 』【第3回】鈴木 寂静
本来の明るさを取り戻して「よし――。こちらが広告を頂くのだ」
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小説『近づく果実 』【第2回】鈴木 寂静
「やりたい職業に就けた」…負の気持ちを空高く舞い上げるほどの期待感
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小説『近づく果実 』【新連載】鈴木 寂静
【小説】『円い町』は「健常者と精神障がい者との区別が全くない」