第二章 晴美と壁

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午後一時からは、スポーツの時間だ。今日は野外の運動場でソフトボールをするという。

紅白に分かれ、晴美は白組へ組み込まれた。勝手に好きなチームへは入れない。

薄化粧が決めた通りにしなければならない。管理的な要素が色濃い気もしないではないが、デイケアはあくまで治療なので仕方がないと、晴美は割り切った。

幸枝さんと同じチームに入れるといいな、と晴美はソフトボールをするのが分かった時点で祈るような気持ちを抱いた。幸い、幸枝は白組に入っていた。

あぁ、嬉しい――。晴美は胸をなで下ろした。晴美はショートを、幸枝は一塁ベースを守った。

紅組が先攻である。白組のピッチャーは薄化粧だ。

薄化粧はボールが速いうえに、ボールコントロールが非常に良く、バッターボックスに立った三人とも空振りを多発し、三振で打ち取られた。薄化粧は「イェー」と右手でⅤサインをすると、その手を高く振り上げた。

白組の攻撃に移った。紅組のピッチャーは若白髪だ。男性だけあって速いボールを投げるが、コントロールが悪い。少し肩に力を入れ過ぎているようだ。一番バッターの幸枝の打球はショートを越えた。

「イェー」ベンチにいる薄化粧が大声を張り上げた。ベンチのみんなは「イェー」とそれに続いた。ベンチは突如、活気づいた。しかし、二番バッターはライトフライで打ち取られた。「ドンマイ、ドンマイ」薄化粧は言った。

三番もショートゴロであった。四番は晴美である。彼女はニックネームの件ですっかり人気者になっていた。しかし、責任は重い。晴美はその重さに打ち倒されそうになった。両肩にずっしりとその重さがのしかかる。

何くそ。いざというときこそ大事なのだ。友達になりたいと思う幸枝が一塁ベースにいるのだから。

ここはヒットを打たないと幸枝と絆を持とうとするのも難しいかもしれない。