第二章 財政再建シミュレーションの検証
シミュレーション4 消費税の増税と社会保障費を削減した場合
シミュレーション4と5は、私が作った国の運営計画で唯一、現行の社会保障制度を根本から見直す計画になっています。結論的にいうと、この二つの計画は似ているように見えて、その効果は全く違う結果となりました。
まず、シミュレーション4の計画ですが、その内容としては、現在、増え続けている社会保障費を抑制するため、年金、介護費用の支出分に関しては、あくまで保険料収入と地方負担分だけで賄える範囲だけとし、それでも財政均衡が図れなかった場合、その足らない分を消費税の増税を行い、政府の支出と歳入のバランスを上手にとる事によって、財政再建を目指す計画となっています。
その具体的な内容としては、毎年国民から徴収している公的年金や国民健康保険等の社会保険料の総額は現在約七十三兆六千億円になり、反対に支払っている社会補償費の総額が百二十四兆円になっています。
この足らない五十兆円は、現在、国と地方で補填しているのですが、この計画では原則この入ってくる七十三兆六千億円と地方の負担分十五兆円の保険料だけで、毎年発生している年金、介護、医療費の全てを賄い、現行の消費税の社会保障に対する目的税化を止め、国の一般財源とする計画となっています。
また、失業保険や児童給付金などその他の社会保障費は、一般財源としての費用とみなして計算してみました。ただし、これだけでは財政再建のメドが全く立たなかったので、シミュレーション1のように二〇二五年から消費税を徐々に上げていき、二〇四〇年には消費税を一旦20%にまで引き上げてみました。
すると、現在、年金生活者一人当たり、介護、医療、年金を合わせた社会保障費は年平均二百二十六万五千円ほど国が支払っているのですが、これが二百七万一千円で年二十万円程度の減少で一旦は収まりました。
しかし、これも最初だけで、少子高齢化に伴いそこから毎年約一万三千円ずつ減少していく事になります。たぶん介護費用を一気に下げる事は難しいので、この制度に変更した場合、皆さんの生活費がいきなり月一万五千円下がり、そこから毎年、月一千円ずつ下がり続けると思ってもらえれば差支えないでしょう。
また、国、地方が発行している公債の発行額はコロナ禍でもあり、二〇二一年度は約五十兆円近く発行する予定となっていますが、シミュレーション4通りに二十二年度から始めた場合、今まで二十三兆円近く毎年増加していた国の借金が、二〇三五年には約七兆円にまで減少させる事ができました。
ただし、国債発行額が減少したとはいっても、それでも毎年七兆円近くの国債が増加していく計算になるので、少子高齢化の進行と消費税増税によるGDPの減少によって、結局、GDP比率を改善する事ができませんでした。
結論からいうと、老後二千万円問題からもわかる通り、今回のこのシミュレーション4では、国の財政を立て直す事はできませんでした。その主な理由として考えられるのは、以下の二つになります。