第二章 財政再建シミュレーションの検証
消費税を増税する事の危険性
話は元に戻りますが、シミュレーション1と2を見てもはっきりわかる通り、現在の社会保障制度に全く手を加えず、消費税のみの増税だけでは、この様々な問題の何一つとして解決できませんでした。
この二つの計画は、単に財政破綻(デフォルト)を数年遅らせる事ができるだけの愚策としかいえません。
シミュレーション3 財政拡大によるGDP比率の調整
日本の経済学者の多くには、日本の国債は自国通貨建てなので絶対に財政破綻はしないという主張を持った方々が大勢いらっしゃいます。また、この主張を根拠にして、長年低成長だった日本経済を活性化させるためには、政府の更なる積極財政を強く主張される方も、本当に多くこの日本には存在します。
現在、日本の財政状況は、通常、新型コロナウイルスなどによる不況を考えなければ、毎年約二十三兆円前後の割合で債務が膨れ上がっている状態です。
そして、この二十三兆円の赤字分を補填するためには毎年約十兆円、年率約2%の経済成長を行えば総債務残高のGDP比率は変わらず、日本の借金は増えていない事になります。
それでは、彼らが主張するように、たとえこの少子高齢化による低成長時代においても、政府の更なる積極財政政策を推し進める事で、本当に財政再建と経済成長を両立させる事ができるのでしょうか? ここでは、それを詳しく検証したいと思います。
まず、シミュレーション3では、日本のGDPを毎年2%ずつ成長するように、日本の国家予算の額を調整してみました。
すると日本の実質GDPは、十年後の二〇三二年には六百五十四兆円にまで増加させる事ができました。しかし、政府の総債務残高は二千二百兆円を超え、GDP比率も338%と230%を大きく上回る結果となってしまいました。
これは二十三兆円の国債発行に加え、更に十兆円もの追加の発行が毎年必要になってくるためで、2%の経済成長ではその損失分をうまく補填できなくなってしまったためです。
また、二〇三一年には日本の総債務残高二千六十三兆円が、家計の金融資産である二千二十三兆円(二〇二〇年末時点)を超えてしまうため、この時点で、もしかしたら自国通貨建ての国債発行ができなくなる可能性もあります。仮にGDP比率を常に230%にするために、更に現状より国家予算を増額した場合、国の総債務残高が家計の金融資産の額をもっと早い段階で超えてしまうため、この方法も間違いなくうまくいかないでしょう。