そもそも、この財政出動による経済活性化策は、安倍政権で見事に失敗しています。この政権は、日本の国家予算を毎年少しずつ増やしていき、安倍首相の就任期間の八年間だけで約十兆円近くも増やしました。

これにより、日本のGDPも約三十兆円以上も拡大する事ができましたが、日本政府の総債務残高も百七十兆円増加し、GDP比率に至っては180%から200%にまで落ち込んでしまったのです。

この計画の一番の問題は、日本の税収率がGDPの約12%前後という事です。なので、安倍政権時のように十兆円の予算を使って三十四兆円の経済効果がたとえあったとしても、税収はたった四兆八千億円増加しただけなので、正味五兆九千二百億円の赤字になってしまい、かえって日本の財政赤字は拡大した形になってしまうのです。

このため、積極財政政策は短期的な景気対策においては、十分その効果が期待できるのですが、その反面、長期的な経済成長を促す事ができず、このシミュレーション3でも財政再建を達成する事はできませんでした。

しかしここで、この意見に対して強く反対される方も大勢いらっしゃる事でしょう。特に日本の経済学者さんの中には、「日本の財政は絶対に破綻しない」という信念をお持ちの方がたくさん見える事もよくわかっているつもりです。

私も、その意見については真っ向から否定するつもりはありません。しかし、私のような企業の経営者は、常に万が一の事を考えて企業経営を行っています。もし今後、日本の財政が悪化し続け、デフォルトの兆候が市場で頻繁に見られるようになったら……。

止まらない円安、物価の急激な上昇、債権の投げ売りが、もし本当に起こってしまったら……。

その時になってからではもう遅いのです。たとえどんなに政府や日銀がその時最善を尽くしたところで、日本の財政は受け身すら取れずに確実に破綻してしまうでしょう。そうならないためにも、今のうちから打てる手は打っておくべきなのです。

 

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