第二章 財政再建シミュレーションの検証

シュミレーション5 社会保障費を整理・清算した場合

ただし、皆さんもご存じの通り、この計画には様々な問題点が存在します。まず一つ目が、この計画では国の財政問題のみを解決しただけなので、肝心の少子高齢化対策は何も講じられてはいません。

このため、日本の人口減少に伴いGDPが今後マイナス成長し続ける事が予想されます。財政の均衡がとれたのは、あくまでこれまで通り年十二~十三兆円の国債の元本が減り続ける予定なので、GDPがそれに伴って減少し続けても、国債に対するGDP比率が単に悪化しなかっただけの話なのです。

二つ目には、この計画はあくまで年金生活者に対して、社会の全ての負債を押し付ける計画です。もちろん、もうすでに老後資金の蓄えが十分あったり、配分された分配金や個人資産でうまく運用できさえすれば全く問題ない話なのですが、多くの方々がそれをできずに社会の「負け組」になってしまう事が予想されます。

しかも、これは単に現在の年金生活者だけの問題ではなく、いずれ自分達も彼らと同じ老人になる日が訪れ、同じ問題に直面するという事も意味します。

しかし、もし仮に日本人が断固移民政策を拒否するつもりであれば、政府は迷わずこの政策を実行するべきです。なぜなら、資本主義の原則が、あくまで「借りたものは、必ず返す」だからです。「自分達が、生活できないから嫌だ」では通りません。

日本の国債を買った外国人投資家からすれば、「貸したものは返してください、それで日本がどうなろうと、私達には関係ありません」といわれるだけの話なのです。あなたが、国債を持っていても、きっと同じ事を思うでしょう。ここは日本で自分達が日本人だからといって、何でも自分達の思うようにできるとは限らないのです。