第二章 財政再建シミュレーションの検証
消費税を増税する事の危険性
問題なのは、消費者と企業にとって消費税を上げるという行為が、どれほどの負担になるのかという点です。消費者にとっては、自分の給料が別段下がるわけではなく、単に消費税分の物価が上がるだけなので、今までの生活と比べて増税分だけ生活が質素になったと感じるだけで済みますが、企業にとっては、単に売上が下がるという次元では済みません。消費税の性質上、増税分だけ利益(所得)がなくなってしまうのです。
通常、単に売上が下がっただけの場合、その減少分の仕入れは発生しませんが、消費税増税はその分の仕入れもあって更に売上が下がってしまいます。なぜなら、この低成長時代においては消費税の増額分を、企業は簡単には価格に転嫁しづらいためです。
このため、売上低下を嫌がる企業ほど、消費税の増税分を企業がそのまま負担してしまうので、増税分だけ利益を蝕んでしまう結果になるのです。たとえそれが、赤字の会社であってもです。ここが、法人税や所得税などの他の税金と違うところです。
このため、消費者よりもむしろ企業に与えるダメージのほうがずっと大きく、この負担分だけ日本の企業の競争力、ひいては日本の国力を削ぐ結果にもつながってしまうのです。
また、この税金は輸出品に対しては徴収されないので、日本で部品を調達し、作った商品を海外に輸出している上場企業に対しては、反対に部品などで支払った消費税が戻ってくる仕組みになっています。
それとは逆に、輸入品に関しては関税と同じ効果が期待できる側面も持ち合わせているため、安定的に税が徴収でき、なおかつ日本の主力産業にも見えない形で支援ができる、まさに政府にとってはいろいろな意味で都合がいい税金なのです。
しかし日本の中小企業、中でも長年デフレによって苦しめられてきたサービス業にとっては、消費税の増税はまさに死活問題です。消費者物価指数の推移でもわかる通り、長年、日本経済はデフレ状態の中にありました。
この理由は、日々日本の企業の生産能力が向上している半面、反対に需要の成長がそれに追いついてこなかったからだと推察できますが、問題はこのような場合、通常の企業は価格を下げて販売個数を増やす事によって、自分の会社の売上をまず維持しようと努めます。